昇仙峡「天狗岩」「仙娥滝」「覚円峰」の名前の由来
昇仙峡は山梨県甲府市北部にある渓谷で、国の特別名勝にも指定された山梨の観光名所の一つです。
観光地としての昇仙峡の歴史は江戸時代後期に遡ります。
もともとは、岩盤が連なる深い谷で、荒川西岸の山々を越える険しい道しか通っていませんでした。
そこで、江戸時代後期、地元の猪狩村(現在の猪狩町)に住んでいた長田円右衛門が、人馬が安心して通ることができる、生活のための道を造ろうと、近隣の村などと協力して工事を開始しました。
途中、豪雨により道が流されるなど、工事の中断を余儀なくされましたが、着工から約10年を経て御岳新道が開通しました。開通後も円右衛門は、新道の保全に努めながら、新道沿いの渓谷を精力的に紹介し、その美しさを伝えていったそうです。
正式名称は御岳昇仙峡と言い、春夏秋冬四季折々の姿で観光客を魅了。特に紅葉のシーズンになると外国人旅行客含め多くの観光客で賑わい、絶好の写真スポットでもあります。
昇仙峡の紅葉 photo AC
昇仙峡の紅葉 photo AC
紅葉の見頃は例年10月下旬から11月中旬で、遊歩道も整備されているので途中紅葉の綺麗な道を歩いて散策することも可能です。散策する場合は地図を携帯すると位置やスポットの名前も分かるのでおすすめです。
また昇仙峡には数多くのユニークな名前の名所があり、たとえば、「天鼓林橋」は通称「愛のかけ橋」とも呼ばれ、カップルで渡ると愛が成就するとも言われています。
天鼓林という名前は、この林に足を踏み入れた際に地下奥深くから響いてくる音に由来します。これは長い年月をかけて削り取られた地下の空洞に、足音が反響して響くからで、昔この林を訪れた旅人が、その音を天から太鼓を授かったような音が響く不思議な林だと言ったことから、「天鼓林」と呼ばれるようになったそうです。
他に岩や断崖にも面白い名前や歴史を感じさせる風流な名称のものがあり、下の崖は「天狗岩」と言います。
天狗岩の名前の由来は文字通り、ごつごつとした岩肌が天狗の横顔に見えるからというもののようです。
天狗岩に対置するようにそびえ立つのが、昇仙峡の主峰「覚円峰」です。全国の観光地百選の渓谷で一位に選ばれているほど人気の名勝で、直立約180m。覚円峰という名前は、はるか昔、沢庵禅師の弟子、覚円が畳数畳ほどの広さの頂上で修行したことに由来します。
かつて頂上で修行したということは、頂上までの登山道もあるのでしょうか。
落石など様々な危険があるからか、長く誰も立ち入っていなかったようですが、一応、古い登山道はあるようです(参照サイトでは実際に登山した様子や頂上の写真が掲載されていますが、写真だけでその険しさや緊張感が伝わってきます)。
昇仙峡の名所の滝が、「仙娥滝(仙ヶ滝)」です。日本の滝百選にも選ばれ、轟々と激しい滝というより繊細で美しい滝です。
名前に使用される「仙娥」とは、中国の古い神話に登場する月に行った仙女(女の仙人)のことで、ひいては月も意味します。
仙娥滝という名称も、この仙女に由来するようですが、なぜこの神話が滝の名前として呼ばれるようになったかは定かではありません。
昇仙峡の、「仙」人が「昇」るという名前もそうですが、仙人や仙女などの伝説が多くあった場所なのかもしれません。
以上、甲府の昇仙峡にある各名所の名前の由来でした。