甲州弁「しわい」の意味
山梨県の方言「甲州弁」には、「しわい」という表現があります。
しわいとは、「ふてぶてしい、しぶとい、一筋縄ではいかない、図々しい、手に負えない」という意味です。
甲州弁自動販売機には、イラスト付きで、「えらいしわいじゃん」という方言もありますが、これは「すごくふてぶてしいね」といった意味合いになります。
また、普通に、「あいつはしわいからなぁ」といった使い方もします。
甲府市役所のホームページに掲載されている、よく使う甲州弁ランキングでは15位。好きな甲州弁ランキングも15位となっています。
ただ、僕自身はほとんど使ったことがなく、親や祖父母、また、方言を結構濃く使う同級生が、子供の頃にときどき使っていた記憶があります。
一方で、この「しわい」は、どうやら全国各地で方言として存在するようです。
たとえば、岡山県で「しわい」は、「固いわけではないのになかなか噛みきれず、飲み込めないような食感」や、「ケチ」といった意味もあると言います。
島根県の方言でも、「しわい」は似たニュアンスで、「強靭な、強固な」「難儀な、苦しい」「歯に固い、歯切れの悪い」「強情な」「けちな」といった意味になります。
また、山口県や高知県などでは、「しわい」は「しつこい」を意味するそうです。
四国で、「しわい」が「打たれ強い、一筋縄ではいかない」という使い方もする、という声もあります。
その他、広島にも「しわい」という言葉はあり、「しんどい、辛い、苦しい」という意味で使われるとのこと(「しわいマラソン」があるそうです)。
ご覧の通り、「しわい」という表現自体は結構各地にあり、語源はおそらく、漢字で「吝い」と書く古い日本語(標準語、共通語)ではないかと思います。
吝いとは、「金銭などを出し惜しみするさま。けちだ。しみったれている。」という意味です。
この吝いが、各地の方言として、微妙に意味を変えながら残っているのかもしれません。