甲州弁「おまん」の意味
相手のことを「お前」と呼ぶことがあります。
同等もしくは目下の者に対して使う呼び方で、「お前」呼ばわりされることが嫌いだ、失礼だ、という人も少なくないでしょう。
古くは、「御前」と書き、むしろ逆に目上の人に敬意を持って使われる言葉だったものの、江戸時代の頃から、その敬意性が失われ、同等や目下の人間を対象に使われる言葉となっていきます。
この「お前」という言葉ですが、山梨の方言である甲州弁では、「おまん」という言い方をします。
方言の「おまん」は、そのまま「お前」「あんた」という意味ですが、「お前」よりも多少ニュアンスが柔らかくなる印象があります。
おまんという言葉は、地域差もあるでしょうが、あまり若者は使っていないかもしれません。
僕も、そもそも他人に対してお前という呼び方自体ほとんどしませんが、「おまん」はもっと使いません。
友人や親も使っている場面を見た覚えがなく、よく使っていたと言えば、亡くなった祖父母になります。
甲府市のよく使う甲州弁ランキングでは「おまん」は17位で、「てっ」と同じくらいの票数です。「てっ」というのもだいぶ上の世代が使っていることが多いので、同程度の票数というのも頷けます。
ちなみに、「おまん」の複数形は「おまんとう」で、「私たち」の場合は「おらんとう」という言い方をします。
この「とう」の語源は、「等」なのでしょうか。「おまんとう」や「おらんとう」も、祖父母が使っていた記憶があります。
一方で、「おまんら」と言っている人もいたような気がするので、その辺りは甲州弁と標準語が混ざっているのかもしれません。
ところで、お前を「おまん」と方言で言う地域は、山梨以外にもあるようです。一体どこの地域が挙げられるでしょうか。
調べたかぎりでは、新潟県の方言では、お前を「おまん」と言います。また、高知県の土佐弁でも、お前のことを「おまん」と呼ぶそうです。
以上、「お前」の方言、「おまん」でした。