甲州弁と「おまん」
プロ野球中日ドラゴンズの応援歌でピンクレディーの『サウスポー』の替え歌の歌詞にある、「お前が打たなきゃ誰が打つ」という一節があります。
この「お前」は、「お前」よりも、選手個々の「名前」のほうがいい、という指摘から、応援歌が一時自粛になった、という騒動がありました。
この「お前」という言葉ですが、山梨の方言である甲州弁では「おまん」と言います。
「おまん」は、そのまま「お前」「あんた」という意味ですが、「お前」よりも多少柔らかくなり、おじいちゃんおばあちゃんが孫を呼ぶような割と身近な間柄で使われます。
地域差はあるでしょうが、あまり若者は使っていないかもしれません。
どんな表現も、方言にすれば厳しい言葉も少しはやわらかさが増すでしょうから、この「お前が打たなきゃ誰が打つ」も、試しに甲州弁にしてみたいと思います。
「おまんが打たんきゃ誰が打つずらか?」
適当な甲州弁が見つかりませんでしたが、強いて言うなら、語尾に「ずら」をつけるのがよいかもしれません。だいぶニュアンスは弱まります。
この「おまんが打たんきゃ誰が打つずらか?」とは、「お前が打たなかったら誰が打つのでしょうか、いや、お前しか打つ人物はいないだろ?」といったニュアンスです。
あるいは、
「おまんが打たんきゃ誰が打つで!」
でもよいかもしれません。こちらのほうが若干強めです(野球だけに「ゴロは悪い」でしょう)。
ちなみに、「おまん」の複数形は「おまんとう」で、「私たち」は「おらんとう」や「われんとう」になります。
この「とう」の語源は、「等」なのでしょうか。ただ少なくともこのときに「とう」と読むのは甲州弁的な使い方だと思います。
一方で、「おまんら」と言っているひともいたような気がするので、その辺りは甲州弁と標準語が混ざっているのかもしれません。